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【教育研究家に聞く】科学で判明! 赤ちゃんの「人見知り」の原因と9つの対策

ママにはニコニコ可愛い赤ちゃんが、他の人が近づくと泣いてしまう「人見知り」。人に預けにくいなど、悩まされるママも多いですよね。科学的な調査研究によって、その意外な原因が分かってきたそうです。科学をヒントにした「人見知り」の原因と対策について、教育研究家の征矢里沙さんにご紹介いただきました。

最終更新日:2024.2.26

目 次

【赤ちゃんの人見知り対策】人見知りはいつからいつまで?

泣く赤ちゃん

PIXTA

ママにはご機嫌な赤ちゃんが、他人に対してはギャン泣きしてしまうこともある「人見知り」。
他人はもちろん、ときにはパパや祖父母に対しても泣いたりして気まずかったり、人に預けられないことで悩むママも多いと思います。

人見知りは、およそ生後6ヶ月頃から、2・3歳頃まで続く子が多いと言われています。
時期や程度は様々で、もっと早くから始まる子もいますし、ほとんど気にならない程度の子もいます。

多くの場合、発達の途中で消えてしまいますが、そのまま人見知りを引きずる子どももいるようです。

【赤ちゃんの人見知り対策】科学で判明! 人見知りの意外な原因とは?

赤ちゃんを見つめる母親

PIXTA

人見知りは「赤ちゃんが他人と母親を区別できるようになった証拠」と言われることもあります。しかし、実はこれは間違いだそうです。

赤ちゃんは、生まれてすぐに他人と母親を区別することが、研究によって判明しています。
それなのに、生後半年頃を過ぎると、なぜか人見知りするようになる、というわけです。「遺伝」説もありますが、兄弟姉妹であっても、人見知りをするかどうかは個人差があるようです。

では、赤ちゃんの人見知りのきっかけは何なのでしょうか。人見知りをする赤ちゃんと、しない赤ちゃんには、どんな違いがあるのでしょうか。

「人見知り=怖がり」、ではなかった!?

何かを見つめる赤ちゃん

PIXTA

平成25年に科学技術振興機構が発表した研究結果によると、赤ちゃんの人見知りは、単なる「怖がり」ではなく、「近づきたい(興味がある)けど怖い」、という「葛藤状態」が原因である、ということが分かりました。

この研究では、生後7~12ヵ月の赤ちゃん57名を対象に、「気質(環境からではなく、生まれつきと考えられる心理的な特徴)」の調査をしました。

すると、人見知りが強い赤ちゃんほど、「怖がり」という気質が強い一方で、「接近」という気質も強い、ということが分かりました。一方で、人見知りが中程度の赤ちゃんは、接近する気質がそこまで強くなかったそうです。

人見知りをする子ども

PIXTA

実は、学童期の子どもを対象とした心理学研究では、すでに「人見知りとは接近と回避の葛藤状態である」と報告されているそうです。そして、赤ちゃんの人見知りの場合でも、その点は学童期と同じだということが分かりました。

つまり、「相手に近づきたい」「でも怖い」、この2つのどちらの気持ちを取るか迷って葛藤した結果、「人見知り」になってしまっているようなのです。

人見知りのきっかけは「目」だった!?

目

PIXTA

この研究結果から、人見知りは、「他人と母親を区別できる」ようになったからではなく、「他人に興味を持ち始めた」ために始まる、と考えられます。

では、「相手に近づきたい(興味がある)」のに、赤ちゃんはどうして人見知り行動を取ってしまうのでしょうか。

先行研究から、赤ちゃんは母親と他の人の顔の違いを正しく認識できることが分かっています。人見知りが強い赤ちゃんでも、弱い赤ちゃんでも、それは同じだったそうです。

では、人見知りが強い赤ちゃんは、何に注目しているのか。
それは、「相手の目」でした。

何かを見る赤ちゃん

PIXTA

研究の結果、人見知りが強い赤ちゃんは、人見知りの弱い赤ちゃんよりも、相手の「目」の部分を長い時間見ていることが分かりました。

さらに、こちらを向いた顔(正視顔)と、よそ見している顔(逸視顔)を同時に見せたところ、人見知りの弱い赤ちゃんは「こちらを向いた顔」を長い時間見ていたのに対して、人見知りの強い赤ちゃんは「よそ見をしている顔」を長い時間見ていたそうです。

これらの結果は、人見知りの強い赤ちゃんと弱い赤ちゃんにグループ分けした時だけに観察され、月齢の高低や、「接近」気質の強弱、「怖がり」気質の強弱、というグループ分けでは見られなかったそうです。

「相手に近づきたい」そして「相手から離れたい」という、相反する行動の狭間で思わず相手の目を見てしまう。でも、相手に見られ続けると目をそらしてしまう。逆に、相手が目をそらすと、じーっと観察する。人見知りの強い赤ちゃんは、このような行動をしていることが示されました。

○「目」を合わせると人見知りが発動!?

狼

PIXTA

動物にとって「目を合わせる」ということは、基本的に相手を威嚇するような場合に限られているそうです。そのため、目が合うと自動的に脳の「扁桃体(へんとうたい)」という部分が働き、恐怖を感じると言われています。

この仕組みが人間の脳にもあるため、「目を見ると反射的に恐怖を感じてしまう」のです。

大人であれば、脳の「前頭前野」という部分の働きによって、相手が危険でないとわかれば、恐怖を抑えられます。でも、赤ちゃんはそれが未発達なため、反射的にわき上がる恐怖を抑えることができません。

抱っこされる赤ちゃん

PIXTA

つまり「近づきたい気持ちはある」がために、つい相手の目をじーっと見てしまうタイプの赤ちゃんが、本能的に怖くなって「人見知り」してしまうのではないか――
そんなことが、この研究からは分かったと言えます。

怖いもの見たさで見てしまうという行動は、大人にもありますよね。
目が怖いなら見なければいいのに、「怖いけど見ちゃう」という矛盾した行動や葛藤が、あんな小さな赤ちゃんにもあるなんて、ちょっと意外ですね。

参考:科学技術振興機構(JST)「赤ちゃんの『人見知り』行動 単なる怖がりではなく『近づきたいけど怖い』心の葛藤」

【赤ちゃんの人見知り対策】人見知りの原因は、ママのせいじゃない!

高い高いする母子

PIXTA

人見知りの原因は、「生まれつきの気質」と「本能的な脳のはたらき」だった、と言えます。人見知りが激しいからといって、小さい頃に家の中ばかりいたから。とか、ママの性格が内向的だから、とか、そうした外的な要因はさほど関係がないと考えられます。

人見知りで悩んでいる方は、まず「ママのせいじゃない」と安心して下さい。

「近づきたい」も「怖がり」も、その赤ちゃんの生まれ持った個性です。
極端な人見知り行動は、2~3歳頃になれば収まると言われています。下記の対策を取りながら、その子のペースで成長していくのを見守ってあげましょう。

もしも気になったら専門機関へ

診察を受ける母子

PIXTA

もしも、極端に人見知りがない、あるいは、2~3歳以上になってもあまりにも人見知りが激しい、という場合は、小児科や地域の子育て支援センターなどの専門機関へ相談することもおすすめです。

上記の場合でも、必ずしも発達に問題があるとは言い切れません。
総合的な判断になるので、ママが不安なようなら、一度気軽に相談してみて下さい。

赤ちゃんの人見知り対策、科学をヒントにした9つの方法

両親と子ども

PIXTA

そうはいっても、赤ちゃんの激しい人見知りに対応するのは大変ですよね。
科学的な研究の結果をヒントに、赤ちゃんの人見知りへの9つの対策についてご紹介します。

1. 赤ちゃんの目を覗き込まない

泣く赤ちゃんをあやす男性

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赤ちゃんを安心させようと、目と目を合わせて「怖くないよ~」と伝えようとしがちですよね。この研究から、赤ちゃんの本能として、それは逆効果だと分かりました。

人見知りの対象となってしまった人は、赤ちゃんの目はなるべく見ない方が、怖がらせなくて済むようです。

2. 赤ちゃんに注目しない

赤ちゃんを呼ぶ大人たち

PIXTA

人見知りの赤ちゃんは、相手に見られ続けると(怖くて)目をそらしてしまうことが分かりました。

可愛い赤ちゃんの様子には、つい皆で注目してしまいますが、人見知りの赤ちゃんにとって、大勢の人に一斉にじーっと見つめられるのは、怖いことなのかもしれません。

ママ以外はなるべく赤ちゃんに注目せず、そっとさりげなく見守ることがおすすめです。

3. ママと親しくする様子を見せる

食事をする赤ちゃんと女性たち

PIXTA

人見知りの赤ちゃんは、見つめられるのは怖くても、よそ見をしていると、他人の顔をじーっと観察するということが分かりました。

このことから、赤ちゃんと向き合うのではなく、赤ちゃんが信頼しているママと向き合って、「ママと親しくしている様子を赤ちゃんに見せる」ことが有効だと考えられます。

赤ちゃんは、母親が周囲の人とどう関わっているかをよく観察していて、ママが親しくしている相手は、「自分にとっても味方だ」と感じます。

赤ちゃんからはよそ見をして、ママと親しい様子をしばらく観察させれば、警戒心が解けやすくなるかもしれません。

4. 顔を見慣れさせる

テレビ電話をする親子

PIXTA

パパや祖父母などの身近な人は、普段から顔を見慣れさせておくことも有効です。

人見知りの強い赤ちゃんは、よそ見をしている顔はじっと見つめることから、会えないときはテレビ電話や写真などで顔(赤ちゃんを直視していない顔)を見せておくと、赤ちゃんが自分から観察して、実際に会ったときにも慣れやすくなる可能性があります。

5. あらかじめ声をかける習慣を

赤ちゃんを抱っこする女性

PIXTA

赤ちゃんが言葉を話せない頃でも、おむつ換えなどで声かけをするとよい、というのはよく言われますよね。

言葉が理解できなくても、ママが目を見て声をかけてくれることで安心したり、これから何かあるんだな、と予感することはできます。

他の人に会ったりするときは、突然ではなく、あらかじめきちんと声をかけてあげることを繰り返すと、赤ちゃんも心の準備ができ、ママへの信頼も育ちます。

6. いつもの場所で人に会う

家族集合

PIXTA

赤ちゃんは人見知りだけではなく、場所の変化を怖がる「場所見知り」をすることもあります。

人だけでなく、周りの環境の変化まで気になってしまうと、赤ちゃんにとっては大変。

祖父母や友達は自宅に来てもらうなど、赤ちゃんにとって慣れた場所で会ってもらえたら、怖い気持ちも少なくなるのではないでしょうか。

7. 周りには「見られると泣いちゃうんです」と説明する

電車に乗る赤ちゃん

PIXTA

赤ちゃんを連れていると、バスや電車で他人に話しかけられることも多いですよね。
せっかくあやしたり笑いかけてくれたのに、ギャン泣きされると気まずいことも・・・。

「今人見知りで、見つめられると誰にでも泣いちゃうんです」などと説明して、「この人はとっても優しい人だから大丈夫だよ」と赤ちゃんにも声をかけつつ、相手にもフォローを入れるなどしましょう。

8. 人に会う機会を避けない

おもちゃで遊ぶ赤ちゃん

PIXTA

人見知りの激しい赤ちゃんも、実は「人が嫌い」とか「興味がない」のではなく、「人と近づきたい」という気持ちは人一倍持っていることが、研究から分かりました。

人見知りだからと、ママが人に会う機会を避ける必要はありません。

注目しない、目を合わせないなど怖がらせない対策はしつつ、他の人の存在を赤ちゃんが観察できる機会を持つことも大切です。

9. 赤ちゃんのペースで近づいてもらう

ハイハイする赤ちゃん

PIXTA

人を避ける必要はないとはいえ、人に慣れさせなければ、と無理に他人に抱っこさせたり、人の多いところに急に放り込むのは逆効果です。

人見知りの強い赤ちゃんも、「人に近づきたい」という気持ちはあるので、自分のペースでゆっくり人を観察し、自分から近づいていけるようになるのを待ってあげましょう。

おわりに

科学的な研究をもとに、人見知りの原因と対策についてご紹介しました。
赤ちゃんの人見知りが激しいと、ママの負担も大きくなってしまいますよね。でも、人見知りはママのせいではないので、自分を責める必要は全くありません。周りに協力してもらいながら、乗り切っていけるといいですね。

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公開日:2016.3.28

最終更新日:2024.2.26

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